第14章 修学旅行
「ごめん…やっぱり翔ちゃんは俺に起こされたくなかったってことだよね…」
俺は翔ちゃんの寝顔が見れて嬉しかった。
翔ちゃんを起こせて嬉しかった。
初めて見る姿にキュンキュンして、また好きなところが増えた。
でも翔ちゃんは嫌だったんだ。
「ごめんなさい…」
「カズ、違うよ!」
反省して頭を下げたら、焦った翔ちゃんにすぐ体を起こされた。
「誤解しないで!カズに起こしてもらえたことは、本当に本当に嬉しかったんだよ!これは俺の願望を夢に見てるんだって思うくらい、俺が憧れてたことだから…」
俺の目をまっすぐ見つめて訴える翔ちゃんは、落ち込んでる俺を慰めるために適当なことを言ってるんじゃなくて、本気でそう思ってるみたいに見える。
「憧れてたの?」
「うん…だから、カズに起こしてもらえて、目が覚めて一番にカズの笑顔を見れて、本当に幸せだったんだよ」
「翔ちゃん…」
翔ちゃんの目も声も真剣で。
嘘じゃないって思えた。
でも、それなら起きた時のあの反応はなんだったの?って、結局そこに戻ってしまう。
だって全然嬉しそうじゃなかったもん。
あんな顔されて俺はショックだったんだから。
そこを追及してみたら、翔ちゃんは途端に眉を下げて情けない顔になった。
「だらしない姿を見せたら、カズに幻滅されて嫌われるんじゃないかって思って怖かったんだよ…」
言いにくそうにポツリと呟いた翔ちゃんは本気で不安みたいだけど、その言葉に俺は何だか無性に腹が立ってしまった。