第12章 雨の日は
その後もそんなことが何回か続いた。
天気予報で絶対雨が降ると言われてる日でも、朝から降ってない限りカズは傘を持って来なくて。
天気予報を見てなかった…とか、折りたたみ傘が見当たらなかった…とか。
その時その時で理由は違ったけど。
その度に相合い傘をして、カズを家まで送り届けてた。
俺としては、カズと相合い傘が出来るなんて幸せでしかないから何の問題もなかったけど。
本当に折りたたみ傘をなくしてしまったなら不便だろうから、プレゼントしようとしたんだ。
でもそれを伝えた瞬間、カズは泣きそうな顔でごめんなさいと頭を下げた。
「やっぱり翔ちゃんは迷惑だったよね…俺わかってたのに…ごめんなさい」
「え?何が?どうしたの?」
突然の謝罪に心当たりは全くなくて。
オロオロするしか出来ない俺に、カズが泣きそうになりながら打ち明けてくれたのは可愛い嘘だった。
「わざとなの…俺、わざと傘を持って来ないようにしてたの…」
「え?なんで?」
「だって翔ちゃんと相合い傘したかったんだもん…でもそのせいで翔ちゃんにいっぱいウソついちゃって…」
そんなこと考えたこともなかったから驚いてしまって。
すぐに返事が出来ないでいたら、カズの顔がクシャッと歪んだ。
「本当にごめんなさい……俺のことキライになった?」
うるうると今にも涙が溢れそうな瞳で見上げてくるのが、もう可愛くて可愛くて可愛くて可愛くて…
「嫌いになんてなるわけない!!大好きだ!!」
とりあえず力いっぱい否定して、可愛いカズをギュッと抱き締めた。