第2章 誕生祝い to Nino
しばらくしたら、ドアをノックする音が聞こえた。
「カズ?いるんでしょ?」
姉ちゃんの声に、急いで涙を拭いて顔だけ布団から出す。
「…なに?」
「お客さんよ、翔くん」
翔ちゃんの名前に胸がざわっとして
「やだ!いないって言って!」
なんで翔ちゃんがうちに来たのか考える間もなく、反射的に叫んだ。
今は会いたくない…
だってどんな顔すればいいの?
「せっかく来てくれたのにそういう訳にはいかないでしょ」
でも、やだって言ってるのに、呆れ声の姉ちゃんは聞いてくれない。
ガチャっと問答無用でドアが開けられて、その向こうに姉ちゃんと翔ちゃんの姿が見えた。
うそっ!翔ちゃんもそこにいたの!?
慌てて布団をかぶり直して隠れる。
「カズ!もう、なにやってるの?…ごめんね、翔くん」
「いえ…」
姉ちゃんに怒られても無視してたら
「どうぞ、入って?」
「いや、でも…」
「いいからいいから!ごゆっくりー♡」
ちょっと躊躇ってそうな翔ちゃんを姉ちゃんが押し切る声がして。
パタンとドアが閉められた。
静まり返る部屋の中。
でも、そこに翔ちゃんがいるのは分かる。
わざわざうちまで何しに来たの?
潤くんに何か聞いたの?
1人なの?智は?
疑問が次々と浮かんでくるけど、口には出せなくて。
布団の中でじっと息を殺す。
「カズ…」
ドキドキうるさい胸を押さえていたら、小さく呼び掛ける翔ちゃんの声と、カサッという衣擦れの音が聞こえた。