第11章 新年度 3年生
「だから代わるよ」
「え?」
突然の雅紀の申し出に、ニノはキョトンとして。
「ニノ、翔くんの挨拶見たいでしょ?」
「うん、見たい」
雅紀の問いかけにも珍しく素直に答えてる。
「だから受付は俺たちが代わるからさ、行っていいよ……って、これは風ぽんからの提案なんだけど。だから風ぽんに感謝しろよ」
ポンとニノの肩を叩く雅紀の隣で、風間がそんなことわざわざ言わなくていいよって顔を赤らめてる。
それを聞いたニノは感極まったように風間に飛びついた。
「風間っ!ありがとうっ!」
「わっ!!」
「危なっ」
でも、智と違って受け止め慣れていない風間はニノごとひっくり返りそうになって。
雅紀が慌てて手を伸ばして2人を支えた。
「おい!ニノ!危ねーだろ!ってか俺には礼はないのかよ!」
「風間ー♡」
ブーブー文句を言う雅紀を完全スルーして、ニノは風間をぎゅうぎゅう抱き締める。
「ありがとう♡ほんとにうれしい♡」
「気にしないでいいから。ほら、始まっちゃうから早く行って?」
風間は照れくさそうに笑うと、そっとニノを剥がしてその背中を優しく押した。
「おい!無視すんな!」
「ほんとにほんとにありがとう!行ってきます!」
「おい!」
最後まで雅紀は無視して、風間にだけ手を振ってニノが走り出す。
「2人も行っていいよ。ニノを1人にしない方がいいでしょ?」
風間はニノに手を振り返しながら、俺たちにも早く行くよう促してくれて。
本当に俺たちのことよく分かってる。
俺が残るつもりだったけど、ここは甘えさせてもらおう。
「悪いな、頼むよ」
「うん、任せて」
「ニノ、待って!」
雅紀と風間に感謝しながら、だいぶ先を走るニノを智と急いで追い掛けた。