第11章 新年度 3年生
しばらく不貞腐れた顔をしていたニノは、突然ガバッと智に抱き着いた。
「智~潤くんがいじわる言う~」
「ひどいねぇ、ニノが1人でこんなに頑張ってるのにねぇ」
ニノの突発的な行動にも、慣れてる智は全く動じない。
大袈裟に泣きつくニノを平然と抱きとめると、その頭をよしよしと撫でて慰めてるけど。
おい!俺が悪いみたいになってるじゃねーか!
意地悪なんて言ってないし!勝手にイチャモンつけて突っかかってきたのはニノだろ!
そもそも1人ってなんだ!俺たち3人で働いてるだろうが!
ずっと一緒にいるのに智は何を見てたんだ!?
…なんて。
言うだけ無駄なのは身に染みて分かってるから、文句は心の中だけに留めておく。
こういう時、ニノに激甘な智は絶対的にニノの味方だ。
そこに関しては今更どうこう言っても無駄だし、最初から言う気もないし。
やれやれとため息を吐いていたら、タイミング良く新たな新入生がやって来た。
途端に今までむくれていたのが嘘みたいにニノがシャキッとする。
新入生の胸に花をつけてやりながら、超至近距離で「入学おめでとう」なんてにっこり笑い掛けたりして。
可哀想に、新入生は真っ赤になって挙動不審になってしまっている。
もう無駄に可愛さを振りまくなよ。
いたいけな1年生を惑わすな。
まぁ無意識なんだろうけど。
もうちょっと自覚して動いてほしい。
勘違いするやつがいたらどうするんだ。
……まぁ、そのために俺たちがここにいるんだけど。