第10章 ホワイトデー
-Sside-
「おいしかったー♡ごちそうさま、翔ちゃん♡」
少食で甘いものもたくさんは食べないカズが、クッキーをペロリと全部平らげてニッコリ笑う。
可愛い。
本当に美味しかったんだろうな。
喜んでもらえて嬉しいけど、クッキーを作ったのは潤だから。
素直に喜びきれない。
カエルと間違われたし…
いや、別に根に持ってるわけじゃないよ。
クマだろうがカエルだろうが、カズが可愛いって言ってくれたんだから良しとしなきゃね。
カズが喜んでくれるのが一番大切なんだから。
気を取り直して、もう1つ用意していたものを取り出す。
「ね、カズ」
「なぁに?」
「これも受け取ってくれる?」
「え?」
ぽんと手の上に置かれたものを見て、カズの顔がパッと輝いた。
「こんぺいとうだ!」
そう、金平糖。
でもただの金平糖じゃないんだ。
これはカズを元気にする魔法の薬。
カズに贈るのは3回目。
今年は欲しいと言われたわけじゃなかったけど、俺が贈りたかった。
カズのことはいつだって俺が笑顔にしたいし、もう絶対泣かせないと心に誓ってる。
でも、まぁ…お守り的な?
絶対ないようにしたいけど、もし何かあった時、俺の贈ったものでカズを少しでも元気付けられたら…なんて。
こんなのただの自己満足。
自分勝手な押し付けだって分かってる。
「ありがとう、翔ちゃん♡」
それでもカズは本当に嬉しそうに笑ってくれた。