第10章 ホワイトデー
クッキーは美味しそうに焼けたものの。
顔を描くのがまた難しくて。
目の位置がおかしいクマがいるのは分かってた。
でも、そうか…
俺たちのクッキーはカエルに見えるのか…
雅紀のはしっかり可愛らしいクマに仕上がってるから、比べられたくなかったなぁ。
「ごめん、カズ…これでもかなり頑張ったんだけど…」
俺もそれなりに凹んでいるけれど。
隣では俺以上に翔がズーンと落ち込んでいて。
「ああっ、翔ちゃん!ごめん!ごめんね!」
翔が涙目でしょんぼりと謝ると、ニノが慌ててすっ飛んできた。
「可愛く作れなくてごめん…」
「そんなことないよ!俺すっごくすっごく嬉しいよ!翔ちゃんが頑張ってくれたの伝わってくるもん!」
「カズ…」
翔にぎゅうっと抱きついて何とか励まそうとニノが一生懸命言い募る。
「間違えてごめんね?でも本当にとっても可愛いよ♡翔ちゃんがいつも食べるのもったいないって言う気持ちがわかっちゃった!」
「……味は美味しいから食べてね」
クッキー生地を作ったのは俺だからな?
まぁ、黙っててやるけど。
「じゃあ食べさせて♡」
「うん!はい、あーん」
「あーん♡わ!おいしー♡」
パクリと食べたニノの顔がパッと輝く。
「もっと食べたい♡」
「良かった!あーんして?」
「あーん♡」
珍しくたくさん食べてるから、本当に美味しいと思ってくれてるんだろう。
そうそう!
大事なのは見た目より味だよ!味!
いや、出来れば味も見た目も良いものを作りたかったけどさ。
褒められれば単純に嬉しい。
凹んでいた俺の気持ちも少し浮上する。