第1章 新年度
教室に着くと、ものすごく珍しい光景が目に飛び込んできた。
「翔ちゃんのばか!」
「待って!カズ!ちゃんと聞いて!」
「やだ!」
ニノと翔くんがケンカしてる。
「今日は雨か?」
隣で潤が真面目に呟くけど、本気で天気の心配したくなるくらい珍しいことなんだよ。
「雪かも。どうしよ、傘持ってきてないよ」
クラスメイトたちも静かすぎるくらい静かに2人のやり取りを見守ってる。
「智っ!!」
俺たちも呆然と見ていたら、俺に気付いたニノが走り寄ってきた。
そのまま抱きついてくるのを受け止めてやる。
「ニノ、どうしたの?」
「うぅ…さとしぃ…翔ちゃんが…」
うるうるの上目遣いに今にも泣きそうな顔。
俺はニノのこの顔に弱い。
「どうしたの?何かやなことされたの?」
ニノを溺愛してる翔くんがそんなことするとはとても思えないんだけど。
今も泣きそうな顔してこっち見てるし。
「俺に教えて?」
「うぅ…」
優しく聞いて、ニノが口を開くのを待つ。
「あのね…」
ニノはしばらくムニムニしてたけど、やっと口を開いてくれたと思ったら
「あのね、翔ちゃんが“俺が先に好きになったから俺の方が好きな気持ちが大きい”とか言うんだよ!時間なんて関係ないよね!俺の方が好きだもん!」
目を潤ませたまま一息に捲し立てる。
ニノは大真面目に言ってるみたいだけど…
「はあぁ?」
俺の口からは間の抜けた声が出た。