第9章 バレンタイン
「俺さ、2年生で同じクラスになってから、みんなと一緒に行動することが増えたじゃない?」
ふいにポツリと。
独り言みたいに風ぽんが話し出した。
「みんなと居るとすごく楽しいけど…俺、ずっと5人+1人っていうか…一緒にいるけど俺だけ部外者みたいな気がしててさ…」
風ぽんはポツリポツリと、言葉を選ぶみたいにしながら静かに話してるけど
「は!?そんなことあるわけないじゃん!なんでそんなっ…」
俺は考えたこともなかったその内容にびっくりして、思わず大きな声が出てしまった。
ちょっと問い詰めるみたいになってしまったかもしれない。
だってすごくショックで。
風ぽんはずっと仲間はずれみたいな気持ちでいたの?みんなで居ても1人だって?
「分かってる、みんなはそんなこと思ってないって。俺が勝手にそう感じてただけ。自分でも卑屈な考えだって思うよ…」
「そんな…」
俺、風ぽんがそんな風に感じてるなんて全然気付いてなかった…
自分が不甲斐なくて、情けなくて、悲しくなる。
でも風ぽんはふわりと微笑んだ。
「ニノって本当に気を許した人にしかワガママ言わないでしょ?」
「え?」
ニノのワガママ?
確かにあれは甘えだから、仲がいいやつにしか言わないけど…
話が急に変わった気がして、ちょっと戸惑う。
「だから今回こんな風にニノに誘ってもらえて嬉しかったんだ。俺のことも友だちって認めてくれたのかなって…」
でもちゃんと繋がってた。
それで分かった。
風ぽんの “嬉しい” って言葉には、こんな想いが込められてたんだって。
何だか色んな想いが渦巻いて胸がきゅっと苦しくなった。