第8章 誕生祝い to Sho
いつまでもカズの腕の中にいたい気もしたけど。
もらった指輪をちゃんと見たいし、しっかりお礼も伝えたい。
だから後ろ髪を引かれる思いだったけど、涙が落ち着いたタイミングで、自分からそっと体を離した。
カズの前で泣くのは2度目…かな?
嬉し泣きとは言えカズが呆れていないか心配で。
チラリとカズの様子を伺おうとしたら、バッチリ目が合ってしまった。
うぅ、何となく気恥ずかしい…
でもカズは何も言わずにニコッと笑うと、ちょこちょこっと移動してまた俺の隣に並んで座った。
隙間がないくらいぴったりくっついてくれるのが嬉しい。
「指輪ありがとう。すごく嬉しいよ」
「うふふ、良かった」
俺を見上げて嬉しそうにはにかむカズは、もう王子様じゃなくて。
いつも通りの可愛いカズに戻っていて何だかホッとする。
王子様なカズもカッコよくて良かったけどね。
左手を持ち上げて、薬指に嵌った指輪をまじまじと見つめる。
「やっぱりカズは器用だなぁ」
傷なんて1つもないピカピカの綺麗な指輪。
俺の作った指輪とは雲泥の差…比べるのも申し訳ないくらいだ。
でもカズはその不格好な指輪を本当に大事そうに握りしめた。
「これをもらった時、俺ほんとにほんとに嬉しくて。ものすごく幸せで。翔ちゃんにも同じ気持ちをプレゼントしたかったんだ」
「カズ…」
「翔ちゃんが今、あの時の俺と同じ気持ちになってくれてたら嬉しい」
「同じだと思う…これ以上なんてないんじゃないかってくらい嬉しくて幸せだから」
どうしたって違う人間だから全く同じ気持ちかは分からないけど。
俺は今が人生で一番幸せだと感じてる。
あの時のカズが今の俺と同じくらい幸せだったというなら、俺も本当に嬉しい。
「本当にありがとう、カズ」
カズの手から指輪を取り上げて、カズの左手の薬指にもそっと嵌める。
「ずっと一緒にいようね」
「うん」
2つの指輪は全然似てないけど、愛を誓って指輪を贈り合うなんてまるで結婚式みたいだ…なんて。
そんな恥ずかしくて口に出せないことを考えながら、今度は俺からカズを抱きしめた。