第8章 誕生祝い to Sho
首を傾げる俺の目の前に、スっとカズが指輪をかざした。
「……?」
よく分からないまま見ていたら、カズは何気ない感じでその手をくるりと返して。
次の瞬間には不格好な指輪がピカピカの綺麗な指輪に変わっていた。
「……え!?」
何だ?指輪が入れ替わった?
「え?何?どうなってんの?」
きっとマジックなんだろうけど、一瞬のことで何をどうしたのか全然分からなかった。
驚く俺の前に静かにカズが跪く。
俺を見上げる顔が何だかいつもと違って。
可愛らしさがなりを潜めているというか。
やたらかっこよく見えるというか。
あまり見たことのない男っぽい表情に心臓がドキっと跳ねた。
「カズ…?」
ドギマギして落ち着かない俺に、カズは優しく微笑みかけて。
まるで壊れ物に触れるかのように優しく俺の左手を取った。
「翔ちゃんが好きだよ、大好きだよ。翔ちゃんのこと絶対幸せにするから…これからもずっとずっと一緒にいてね」
真剣な顔で愛を誓ってから、薬指にゆっくり指輪を通してくれる。
サイズはピッタリで。
カズは安堵の息を吐くと、指輪の上から小さくキスをした。
プロポーズのような告白に。
まるで王子様みたいなカズ。
頭がぼふんと音を立てて爆発したかと思った。
心臓がバクバクして、頭がふわふわして。
じわりと視界が滲む。
あの日のカズもこんな気持ちだったのかな。
嬉しくて幸せで…幸せすぎて勝手に涙がこみ上げてくるんだ。
「ありがとう、カズ…」
「翔ちゃん…」
お礼を言うのがやっとで、どうにも涙を止められずにいたら、ふわりとカズに抱き締められた。
俺より小さくて華奢なはずのカズの胸が今は広く感じて。
なんだか守られているような気分になる。
カズを抱きしめたことは何度もあるけど、逆の立場になっただけでこんなに感じ方が違うものなんだな。
慣れない状況はちょっと落ち着かない。
でもめちゃくちゃ幸せで。
そっとカズの背中に手を回してみたら、もっともっと幸せな気持ちになった。