第8章 誕生祝い to Sho
ケーキはおやつの時間に食べるってことで話は落ち着いて。
カズはパッと立ち上がると、再びエプロンを身につけた。
「片付けちゃうから翔ちゃんは休んでてね」
袖を捲り上げながら俺を見てにっこり笑うけど。
いやいや、カズを働かせて俺だけ休むなんて出来るわけないでしょ!
むしろご馳走になったお礼に、俺がやるからカズは休んでてって言いたいくらいだよ。
でも、ここはカズの家だから勝手が分からないし。
そもそも俺の家事スキルじゃ1人で片付けるよ…とはとても言えない。
それでも、猫の手よりかは役に立つと思うから。
「俺も手伝うよ」
「でも…翔ちゃんお誕生日なのに…」
「いいからいいから!2人でやれば、その分早く終わるし!ね?」
断ろうとするカズを笑顔で強引に押し切った。
…とは言え、やっぱり俺に出来ることなんてたかが知れていた。
俺は食器を運ぶだけ。
それをカズが手際よく洗っていく。
最初は俺が洗うよと言ったんだけど。
初っ端から洗剤の出しすぎで手を滑らせて皿を落としてしまって。
幸い割れなかったけど、怪我したら大変だからとカズにスポンジを奪われてしまった。
「これで最後だよ」
「ありがと、翔ちゃん♡」
「他にやることある?」
「じゃあ、テーブル拭いてもらっていい?」
「もちろん」
お願いねって台布巾を手渡されて、テーブルを丁寧に拭いていく。
やり取りがなんだか新婚さんみたいで。
嬉しくて、ちょっとこそばゆくて。
いつか、こんなやり取りが日常になったらいいな…と夢見てしまう。
でもそのためには俺ももっと努力をしないと!
慣れた様子で台所仕事をチャチャッとこなすカズに対して、普段家事を全く手伝わない俺は何も出来なくて恥ずかしいから。
まずは皿洗いからかな。
いつか来るかもしれないその日のために!
頑張れ、俺!