第8章 誕生祝い to Sho
使った道具を片付けて、部屋をきれいにして。
でもまだ帰りたくないな…
今日はもうちょっと智とお喋りしたい気分で。
「ねー、まだ帰らなくてもいい?」
「え?俺はいいけど…」
聞いてみたら、なんだか曖昧な返事。
智なにか用事あるのかな?
俺、帰らなきゃダメ?
「…けど?」
「せっかく早く終わったのに、翔くんと会わなくていいの?」
…ちがった!
デートの心配をしてくれてただけだった!
今日は何時に終わるか分かんなかったから、翔ちゃんとは約束してないんだよね。
俺も翔ちゃんも、まさかこんな早く終わるなんて思ってなかったから。
そりゃ今からでも、連絡したら会えるかもしれないけど…
翔ちゃんは大好きだけど、今日は翔ちゃんより智がいいんだもん!
「いいの!今日は智といたいの!」
「もう、そんな可愛いこと言うんだから…」
きっぱり言い切ったら、智がへにゃっと眉毛を下げた。
「…俺は嬉しいけど、翔くんが聞いたら泣いちゃうんじゃない?」
翔ちゃんがこんなことで泣くわけないけど。
もしかして拗ねちゃったりはするかも?
想像したらちょっとおもしろい。
でもいやな気持ちにさせたくはないから。
「翔ちゃんにはナイショにしてね」
「りょーかい」
一応しーって口の前に指を当てたら、智は楽しそうにクスクス笑って頷いてくれた。