第6章 誕生祝い to Satoshi
どうせなら本当に喜ばれるものを贈りたいから、それとなく智の言動を観察して智の欲しいものを探って。
さんざん悩んで決めたのは絵筆。
めちゃくちゃ実用品だけど、確実に使ってもらえるだろうし。
こんな形でも智の作品作りに関われるのは俺もワクワクする。
「あげたいものは決まってるんだ。だから、このあと画材屋に付き合ってくれない?」
プレゼントを決めたのはいいんだけど。
いざ選ぼうとしたら種類が多すぎて俺にはお手上げ状態だったから。
その時点で結局サプライズは諦めてしまった。
「どういうこと?」
ストレートに誘ったつもりなのに智はキョトンと首を傾げた。
「智に好きなのを選んでもらって、その場で買ってプレゼントしたいんだよ」
「えっ?いいの?」
「うん、それが一番確実だと思ってさ。サプライズもロマンチックさも何もなくて悪いけど…」
俺なりに考え抜いて決めたことだけど。
智にはサプライズをしてもらったから、どうしても引け目を感じるというか…なんか申し訳ないような気持ちになってしまう。
でも、智はにっこり笑って首を横に振った。
「そんなことない…だって俺のことすごいいっぱい考えて決めてくれたんでしょ?」
「うん…そりゃ、もちろんそうだけど…」
本当に智が知ったら引くんじゃないかと思うくらい、最近の俺は智のことばかり考えてたし、智のことばかり見てた。
「ちゃんと分かる。伝わってるよ?」
本当に嬉しそうに笑う智はとても綺麗で。
何度見てもこの笑顔に見蕩れてしまう。
「潤が俺のプレゼントのことで頭いっぱいにしてくれてたなんて、すごい嬉しいよ。ありがとう、潤」
「どういたしまして」
智に分かってもらえたことがすごく嬉しかった。