第2章 誕生祝い to Nino
なんでそんな嘘つくの?
別に翔ちゃんと智が2人で会ってたっておかしいことじゃないのに。
偶然でも約束してたんでも普通に会ったよって言えばいいだけじゃん。
必要以上にムキになって否定するのはどうして?
隠そうとするのは何かやましいことがあるから?
智と2人で、何してたの…?
翔ちゃんに聞けば何でもないって分かると思ってたのに。
モヤモヤも消えると思ってたのに。
逆に不安が大きくなっただけだった。
何よりも翔ちゃんに嘘をつかれたことが悲しくて…
でももうこれ以上は聞けない…
だって下手に追求して、もっと聞きたくないことを聞く羽目になったらいやだから。
泣きそうになるのを必死に堪えて
「…そっか、じゃあ見間違いだったのかな」
震える声でそう言ったら、目に見えて翔ちゃんがホッとした。
「よく似た人がいたのかもね」
「世の中には似た人が3人いるっていうもんね」
クスクス笑ってみたけど、自分でも笑っちゃうくらい感情のこもってない声。
棒読みみたいなセリフ。
でも翔ちゃんは気付かない。
俺の騙されたフリに騙されて、安心したように笑ってる。
泣きそうな顔を隠したくてぎゅっと翔ちゃんの胸にしがみつけば、しっかり抱き締め返してくれるのに。
こんなに近くにいる翔ちゃんがものすごく遠く感じた。