第5章 恋敵
「今まですみませんでした…本当は最初から分かってたんです…俺なんか敵わないって… そもそも櫻井先輩は二宮先輩のことしか見てないし…」
菊池はポツリポツリと言葉を選びながら話し出したけど。
まさかこのタイミングでこんな話をされるなんて思ってなかった俺は、びっくりしちゃって黙って聞くことしか出来ない。
…っていうか、こんな話を生徒会室でしていいの?
すぐそこに翔ちゃんいるよ?
今は上田と増田と何やら真剣に話し合ってて、こちらの様子には気付いてなさそうだけど。
翔ちゃんにはバレたくないんでしょ?
今までずっと隠してたじゃん。
俺がそんな心配するのも変かもしれないけど、やっぱり気になっちゃってたら。
増田がちらっとこちらを見た。
ちょっと心配そうな、何かを確認するような、そんな視線。
それを見て、もしかしたら増田たちは菊池が話そうとしていることを全部知ってて、その上で翔ちゃんの気を逸らしてくれてるのかもしれないって思った。
「分かってたけど…それでも俺もずっと、ずっと好きだったんです…でも俺は自分の気持ちを伝える勇気なんてないヘタレで…でもプライドが邪魔して自分の弱さを認めることも出来なくて…」
「うん」
「突然現れて櫻井先輩の心をかっ攫って…俺の望んでいた場所に当たり前みたいな顔している二宮先輩が羨ましくて…憎たらしくて…八つ当たりしてたんです…」
「うん」
まるで懺悔をするように話し続ける菊池はどこか苦しそうだったけど。
俺が止めるのも違うと思うから。
ちゃんと聞いてるよって分かるように最低限の相槌だけ打って、菊池の言葉に耳を傾けた。