第5章 恋敵
まあ、それだけならね。
俺も2人のこと大好きだしね。
むしろ嬉しいくらいだったんだけど。
超過保護になってしまった2人はとにかくうるさかった。
ちょっと歩くだけで、やれよそ見するなだの、段差に気をつけろだの、両サイドから絶え間なく小言が飛んでくるし。
教室移動の教科書とか、お昼ご飯のパンすら持たせてもらえない。
ケガしてるって言ったって体は元気なのに!
さすがに過保護が過ぎると思う!
でも文句を言ってもやっぱり2人とも全然聞いてくれなくて。
もうやだって。走って逃げてやろうかなってぶーたれてたら、潤くんにやんわりと窘められた。
「こら、ニノ」
「だって…」
「それだけ心配掛けたってことだ。昨日は2人とも死にそうに心配してたんだぞ?」
「それは……わかってるもん」
昨日の今日だもん。
真っ青になってた翔ちゃんも、目が真っ赤になるくらい泣いてた智も、まだしっかり覚えてる。
これだけ口うるさいのも、それだけ心配してくれた証だってわかってるよ。
わかってるけど、俺の言うことなんにも聞いてくれないから拗ねたくなったんだもん。
きっと潤くんには、そんな子どもじみた俺の気持ちもお見通しなんだろうね。
「ま、ウザく感じる気持ちも分かるけど。しばらくは付き合ってやれよ、な?」
「…うん」
心配掛けちゃったお詫びじゃないけど。
2人を安心させてあげることが今俺がやるべきことだっていうのも本当はちゃんとわかってるよ。
だから素直に頷いたら、潤くんは優しく肩をポンポンと叩いてくれた。