第5章 恋敵
門班の班長さんはそれこそ朝一番に謝りに来てくれたんだ。
深々と頭を下げる班長さんは本当に申し訳なさそうだったし、俺のことを心配してくれてた。
昨日は先生たちから厳重注意を受けて解散になったみたいで、今日から作業をするって言うから。
「もうこんなことがないように安全にはくれぐれも気をつけて」とだけお願いしといた。
俺自身については、大したケガじゃないしそんな気にしなくていいよって思っちゃうけど。
また同じことがあって、別の誰かがケガをしたら大変だ。その人が軽傷で済むとは限らないんだから。
それにこんなことが何回もあったら、文化祭開催自体出来なくなっちゃうかもしれないし。
わざわざ言葉にはしなかったけど、班長さんにはちゃんと伝わったみたいで。
「二度とこんなこと起こらないようにする」って真剣な顔で約束してくれた。
俺的にはこれで一件落着したんだよ。
でも周りはざわざわ騒がしいままだし。
何より翔ちゃんの心配性に拍車がかかってしまった。
朝は家まで迎えに来てくれて、荷物も全部持ってくれて。
もう大丈夫って何回言っても聞いてくれなくて。
学校に向かう道も校内でも常に手を繋いで、俺から一時も目も手も離そうとしない。
あと、過保護になっちゃったのは翔ちゃんだけじゃなくて智もで。
智には昨日のうちにちゃんと大丈夫だったよって連絡してたんだけど。
いつもよりずっと早く登校してきたと思ったら、そのまま突進してきて無言でぎゅーっと抱きしめられて。
そのあとは翔ちゃんと反対側に引っついて、俺のそばを離れようとしない。