第5章 恋敵
治療してもらってる間も、自分のことなんかより翔ちゃんが心配だった。
だって翔ちゃん真っ青だったんだもん。
何度聞いても“大丈夫、怪我なんてしてないよ”って、そう言ってたけど。
本当の本当はどっかケガしてたんじゃないかって疑っちゃう。
それくらい顔色が悪くて元気なかった。
俺に心配掛けないためにウソついてたらどうしよう…
早く翔ちゃんに会いたくて。
翔ちゃんの診断結果を聞きたくて。
ホッチキスの上にガーゼをあてられて、背中には湿布を貼ってもらって。
今後の予定と注意事項を聞いたら、すぐに処置室を飛び出した。
「翔ちゃんっ………あれ?母さんに姉ちゃん?」
廊下に出てすぐのところで翔ちゃんが待っててくれたんだけど。
その隣には何故か母さんと姉ちゃんがいて。
3人でなんか楽しそうに喋ってた。
「どうしたの?何でいるの?」
和やかな雰囲気で話してた3人が一斉に俺を見たけど、俺には疑問しかない。
母さん仕事は?
姉ちゃん学校は?
「どうしたのって…あんたねぇ…」
首を傾げる俺に、母さんと姉ちゃんが揃ってため息を吐いた。
「先生からあんたが怪我したって連絡もらって飛んできたんじゃないの」
「たまたま休講になって家にいたから、お母さんには病院に直行してもらって、私は保険証届けにきたのよ」
そっか、そうだよね。
学校でのケガだから、そりゃ親に連絡行くよね。
今は呆れたような顔してるけど、2人がすごく心配して駆けつけてくれたことは伝わってきた。