第5章 恋敵
「ニノ…よかった…」
意識があったことに安心した智がヘナヘナとへたり込む。
もちろん俺も安堵したが、小さく呻いているし、やはりどこか怪我をしたんじゃないかと思う。
「おい、ニノ…」
あまり動くなと声を掛けようとしたが
「カズ……っ!!」
下からニノの顔を見た翔が真っ青になって叫び声をあげて。
俺が言おうとした言葉は完全に遮られてしまった。
「…翔ちゃん?」
ニノはゆっくりした動きで顔を動かして。
「翔ちゃんっ!?大丈夫っ!?」
翔を見るなりガバッと飛び起きた。
「……っ!!」
はっきり見えたニノの顔に、俺も血の気が引くのが分かった。
その顔が血に濡れていたから。
おそらく木材で頭か顔のどこかを切ったんだろう。
起き上がったことで、ぽたぽたと血が滴り落ちてニノのシャツが赤く染っていく。
よく見れば翔のシャツにも点々と赤いシミがついていて。
たぶんあれもニノの血だろう。
「カズ!動かないで!」
慌てて翔も飛び起きて、ニノがそれ以上動かないようにその肩をグッと押さえた。
「翔ちゃんっ!大丈夫っ?ケガしてないっ?」
でもニノは血相を変えて翔に飛びつくと、翔の顔や体をペタペタと触って怪我がないか確認し始めた。
自分のことなんかお構いなしにただただ翔の心配をするニノに、翔の顔が泣きそうに歪んだ。