第5章 恋敵
「ニノっ!ニノっ!」
「智、きっと大丈夫だから…」
半分パニックになってる智を宥めながら、みんなと協力して木材をどかしていく。
長いし量もあるけど、1本1本はそんなに重くない。
すぐに地面に倒れた2人が見えた。
「翔っ!ニノっ!」
翔の上にニノが覆い被さっていて。
ニノの顔は見えないけれど、全く動かない。
翔はニノの下で何が起こったのか分からないって顔で、目を見開いていた。
「翔っ!!しっかりしろ!!大丈夫か!?」
「あ、ああ…大丈夫…」
強めに声を掛けると、翔は呆然としながらも返事をしてくれて、とりあえずホッとする。
でもニノはまだ動かない。
「ニノっ!ニノっ!」
「智!ダメだ!頭を打ってるかもしれないからヘタに動かさない方がいい!」
智が泣きながらニノに縋りつこうとするのを、抱え込んで抑える。
「ニノっ…」
ボロボロとこぼれ落ちる涙。
智がここまで泣くのを見るのは、ニノと拗れたあの日以来だ。
智はパニクりながらも、俺の言うことは理解してくれたみたいで。
それ以上ニノに触れようとはせずに、俺の腕の中からニノの名前を呼び続ける。
翔は横たわったまま、首だけを動かしてキョロキョロと辺りを見回して。
ゆっくりと自分の体の上に目を向けた瞬間、その顔色が変わった。
自分の身に何が起こったのかを理解したんだろう。
「……カズ?……カズっ!」
必死に呼び掛けるが、揺すったりはしない。
ちゃんと状況を把握出来てるみたいだ。
「カズっ!」
「………んっ」
何度目かの呼びかけに、ニノがピクっと反応した。
「カズっ!カズっ!」
「ん……いてて……」
モゾモゾと動き出したニノが少しだけ上半身を持ち上げた。