第5章 恋敵
-Mside-
何気なく翔たちを見たニノが怪訝な顔をして。
しばらくジッと見つめていたと思ったら
「翔ちゃんっ……!!」
急に翔の名前を叫んで走り出した。
その声があまりにも切羽詰まっていて、何事かと呆気に取られていたら。
次の瞬間、ものすごい音を立てて塀に立てかけてあった大量の木材が翔たちに向かって倒れて行った。
一瞬のことだった。
今の今まで目の前にいたニノが、次の瞬間には守るように翔に覆い被さっていて。
そのまま2人は大量の木材に飲み込まれていった。
…何だ!?一体何が起こった!?
しっかり見ていたはずなのに、瞬間的に状況が理解出来なくて。
馬鹿みたいに突っ立ってた俺の隣で智が悲鳴をあげた。
「ニノっっっ!!」
その声で我に返って。
真っ青になって走り出した智の後を慌てて追いかける。
「下敷きになったぞ!!」
「早くどかせ!!」
「誰か先生呼んでこいっ!!」
門班のやつらも大声で叫びながら集まってくる。
地面に散乱した木材のそばでは、菊池が呆然とした顔で、しりもちをついた格好のまま固まっていた。
一瞬だったけど、翔に抱きつく前にニノが菊池を突き飛ばしたのが見えた。
あんな理不尽な態度を取られ続けて。
菊池に対して決して良い感情を抱いていないはずなのに。
それでもニノは菊池も守ったのか…
菊池に木材は当たらなかったようで怪我はしてなさそうだ。
ニノの行動がムダにならなかったことに少しホッとした。