第5章 恋敵
もう一度、翔ちゃんたちに視線を向ける。
班長さんとの話は終わったみたいで、翔ちゃんは俺の視線に気付くと笑顔で手を振ってくれた。
その後ろで菊池が睨んでるのも見慣れた光景。
でも何か違和感を感じた。
なんだろ…?
それが何に対する違和感なのか分からなくて。
でも何だかイヤな感じがして。
もう一度ちゃんと見る。
翔ちゃんと菊池…
門班の人たち…
たくさんの箱…
立て掛けられた木材…
………あっ!!
「翔ちゃんっ……!!」
分かった瞬間体が動いてた。
翔ちゃんたちの後ろ。
大量の木材が少しずつ傾いてるんだ。
それも翔ちゃんたちに向かって。
二人は気付いてない。
キョトンとした顔で急に走り出した俺を見てる。
間に合って!お願い!
必死に走る俺の目の前で、ガタッと大きな音を立てて、木材が一気に倒れてくる。
そこからは全てがスローモーションに見えた。
驚いた顔で後ろを振り向いた翔ちゃんと菊池。
口々に何かを叫ぶ門班の人たち。
翔ちゃんたちに向かって倒れていく何本もの木材。
ゆっくり動く世界の中で、俺だけが普通の速度で動けてる。
手前にいたのは菊池で。
呆然と突っ立ってたのを走ってきた勢いのまま全力で突き飛ばす。
こういうの火事場の馬鹿力って言うのかな?
俺よりひと回り体の大きい菊池が簡単に吹っ飛んでいった。
でももう時間がない。
木材はもう目の前だ。
「翔ちゃんっ!!」
とっさに翔ちゃんに覆い被さって。
その頭を胸に抱え込んだところで、頭にガツっと衝撃が来た。