第5章 恋敵
「あいつは相変わらずだな…」
俺と菊池との無言のやり取りを見ていたらしい潤くんがボソッと呟いた。
呆れたような視線を菊池に向けてる。
「潤くん、菊池のこと知ってるの?」
「ああ、まぁな…」
聞いてみたら、ちょっとウンザリしたような声で返事が返ってきた。
内部組同士面識があるのは分かるんだけど。
菊池は生徒会だけじゃなくて部活も翔ちゃんを追いかけて同じサッカー部だったって聞いたから、潤くんとは直接関わりないはずだよね。
しかも全然仲良さそうな感じじゃないし…
何かあったのかな?
「中等部の時、俺もよく睨まれてたんだよ」
疑問が顔に出てたのか、潤くんは肩を竦めながら、俺が聞く前に教えてくれた。
「うぇー…そうなんだ…」
あいつ、潤くんにもそんなことしてたんだ。
恋人じゃなくて親友なのに?
友だちにまで嫉妬ってなんなの?
…ってか、中等部の時から同じことやってんのかよ。
そりゃ潤くんも相変わらずだって言いたくなるよね。
「カメ経由で少し聞いてるよ。最近ずっと、あいつに理不尽に絡まれてるんだろ?」
潤くん、知ってたんだ…
「翔にも誰にも言わずに1人で抱え込んで…」
その顔には心配って書いてあって。
「ニノのばか。俺にくらい甘えてくれたっていいのに」
智はちょっと拗ねたような顔をしてて。
2人の優しさがちょっと疲れ気味だった俺の心にめちゃくちゃ染みた。
やめてよ、泣いちゃうじゃん…
気付かないうちに、2人に心配かけちゃってたことが申し訳なくて。
でもすごく嬉しくて。
「大丈夫だよ…心配してくれてありがとう」
これ以上心配かけないように、滲んだ涙をゴシゴシ拭って、にっこり笑った。