第5章 恋敵
「カズ、準備出来た?行こう?」
ちょっとだけボーッとしちゃってたら、翔ちゃんがにっこり笑って手を差し出してくれた。
条件反射で何も考えずにその手に自分の手を重ねたら、すぐにきゅっと包み込まれる。
あったかくて大好きな翔ちゃんの手。
手を繋げば幸せな気持ちになるけど…
菊池が悲しそうに目を伏せたのが見えて胸がチクッとした。
でも翔ちゃんがそのまま俺の手を引いて歩き出したら、すかさず翔ちゃんの反対側に並んで。
負けないぞって顔で睨んでくるから。
俺も遠慮なく手を繋いだままにすることにして。
「じゃあ、行ってきます!」
「いってらっしゃい」
「俺たちは後で校内の見回りに行ってきます」
「よろしく!」
みんなに見送られて生徒会室を出た。
正門前には、お揃いのTシャツを来た人たちがたくさんいた。
背中に大きく『門を作るぞ!』って書いてあるから、あれが門班だって一目で分かる。
地面には大きなシートが敷かれて木で出来た大きな箱みたいなのが大量に並んでて。
それとは別に大量の木材が塀に立て掛けられてる。
「お疲れ!来てくれたんだな!」
お揃いTシャツの集団に近付いて行くと、中から1人出てきて翔ちゃんに声を掛けた。
門班の班長さんだ。
「お疲れ!初日だからな、来るよ!」
笑いながら気さくに話してるから、翔ちゃんと仲良い人なのかも。
「あれ?先生は?」
「もう来ると思うよ。あのさ、その前にちょっと確認したいんだけど…」
「いいよ、何?」
翔ちゃんがそのまま班長さんと話し始めたから、俺は智を探すことにした。