第5章 恋敵
上田が引き下がっても、翔ちゃんは俺を抱きしめたままで。
翔ちゃんの腕の中で幸せに浸っていたら
「話は終わったか?」
急に冷静な声を掛けられた。
ハッとして顔を上げたら、ちょっと呆れたように笑ってる岡田先輩とバッチリ目が合って。
「………っっ!!」
忘れかけてたけど、ここ生徒会室だった!!
恐る恐る辺りを見回せば、上田だけじゃなくてみんな揃ってるし…みんなこっちガン見してるし…
黙って見てないで、いるならいるって最初に言ってよ!
お姫さま気分になっちゃってるの見られてたなんて恥ずかしいじゃん!
慌てて翔ちゃんから離れようとするけど、翔ちゃんは全然手の力を緩めてくれない。
「終わったなら、仕事の話がしたいんだけど…」
「はい、どうぞ」
にっこり笑って答えてるけど、“どうぞ”じゃないから!手離さないと仕事できないでしょ!
なんとか抜け出そうとジタバタもがいてみるけど、翔ちゃんはビクともしない。
「とりあえず二宮を離してやれ」
見かねた先輩が助け舟を出してくれたけど
「いやです。このままでも話は聞けますから」
翔ちゃんは爽やかな笑顔でキッパリ断ってしまう。
えー!?なんでー!?
先輩の言うことは聞こうよ…
「お前はよくても、二宮が何も出来ないだろうが…」
岡田先輩も呆れきった顔でため息を吐いた。