第5章 恋敵
ぶーってほっぺたを膨らませて不貞腐れる俺を、翔ちゃんは笑って見てたけど。
「ああ、でもやっぱりダメだ…」
ふいに真顔になって優しく頬に触れてくるからドキッとしてしまった。
「なにが…?」
ドキドキしながら聞き返してみたら、そっと手を取られて。
「カズは俺の···俺だけのお姫さまだから」
優しい微笑みと一緒に、ちゅっと指先に小さなキスが降ってきた。
「………っっっ///」
突然の王子さまモードは心臓に悪い!
カッコよすぎて一瞬息が止まったよ!
翔ちゃんの仕草は優雅で。
笑顔はキラキラ輝いてて。
本当に本物の王子さまみたい。
その王子さまが俺のことを愛おしそうに見つめてくれてる。
恥ずかしくて、でも嬉しくて。
顔が燃えてるみたいに熱い。
頭がふわふわして夢でも見てるみたい。
俺は男だし、そんな姫なんて柄じゃないけど。
でも翔ちゃんが王子さまなら、俺は姫にだってなんだってなるよ。
……ううん、ちがう。
なりたいんだ。
翔ちゃんだけのお姫さまに。
ぽーっと翔ちゃんに見蕩れる俺を、翔ちゃんはふわりと腕の中に閉じ込めて。
「だから姫も禁止だよ。カズを姫って呼んでいいのは俺だけだからね」
上田にキッパリ言い切ってくれた。
「…はい」
上田もそれ以上は何も言えなくなったみたいで、今度は素直に頷いた。