第5章 恋敵
「それなんだよなぁ…」
急に翔の表情が曇った。
眉間に皺を寄せて難しい顔をする。
…お?なんだ、翔も気付いてんのか。
まぁ、そうだよな…
ケンカの理由が理由だし、さすがに翔でも気付くか。
恋愛方面ではかなり鈍いから、てっきり知らずにいるものだと思い込んでた。
こんな顔をするってことは、状況は把握してるものの上手く仲裁出来なくて困ってる…とかか?
あれこれ翔の心中を想像していたら、翔がボソリと呟いた。
「カズってさ、可愛いだろ?」
「………は?」
考えていたこととあまりにもかけ離れた内容の呟きに、とっさに頭がついていかない。
なんの話だ?
可愛いのは認めるが、今そんな話の流れだったか?
ニノと菊池が仲悪くて困ってるって話じゃないのか?
「世界一…いや、宇宙一可愛いだろ?」
「それがなんだよ?」
謎の力説が続くが、俺には話が全く見えない。
頭の上を疑問符が飛びまくっている俺にはお構いなしに、翔はボソボソと続ける。
「カズのこと、先輩たちがめちゃくちゃ可愛がっててさ…」
「いいことじゃん」
「上田と増田もめちゃくちゃ懐いててさ…」
「だから、それもいいことだろ?」
本当に翔は何が言いたいんだ?
「いいことだけどさぁ…実はみんなカズのこと好きなんじゃないかって、俺は毎日気が気じゃなくてさぁ…」
いやいや、それはあり得ないだろ。
みんな、翔と付き合ってるって知ってるんだから。
翔は大真面目に心配しているみたいだが、お前が今悩むべきなのはそこじゃない!
なんだかイヤな予感がするな…