第5章 恋敵
「俺はあんたが嫌いです」
これが、俺が菊池から初めて言われた言葉。
選挙が終わって。
顔合わせで初めて生徒会室に役員全員が集まった日。
自己紹介と挨拶が終わって、今日はこれで解散ってなって。
でも翔ちゃんが岡田先輩と少し話があるっていうから待ってた時。
菊池がジッとこっちを見てたから、俺から「これからよろしくね」って声を掛けてみたんだ。
この時にはもう菊池が翔ちゃんのこと好きなのは気付いてたけどさ。
無視できないくらい見てたんだもん。
…で、返事がこれ。
人から面と向かって嫌いって言われたのは初めてで。
別に自分が万人から好かれるタイプだとは全く思ってないし。
嫌いだと思う人だって当然いるだろう。
でもそれをわざわざ伝えてくるとか…
しかも初対面で。
何だかびっくりしちゃって。
ポカンとしてしまった俺を、菊池はすごい目で睨んでた。
「俺は、あんたよりずっと前から櫻井先輩のことが好きだったのに…なんでこんな急に現れた顔が可愛いだけのやつに…」
憎々しげに恨み言をぶつけられて。
でもその声が苦しそうで。
俺は黙ってるしか出来なかったんだけど。
「告白もしてないくせに何言ってんだ…」
「可愛いって褒めちゃってるじゃん…」
上田と増田は呆れたように笑いながら突っ込んでて。
なんかノリが軽い。
え?そんな感じでいいの?
「うるせーな!」
菊池は2人を一喝すると
「俺はあんたなんか認めない!俺はまだ先輩のこと諦めてないから!」
俺に向かってビシッと宣言して、さっさと帰って行ってしまった。