第3章 an aphrodisiac Valentine.
街中の店はどこか賑やかで活気溢れている。
特に飲食店、雑貨屋、それから洋菓子店。
店先にはワゴンを彩る色鮮やかにラッピングされた大小様々な物が並び、洋菓子店には女子の行列が出来ている。
その光景と大々的に宣伝されるポスターを見てエリナはやっと理解した。
「…バレンタイン…か」
街ゆく女子は弾むような笑顔を乗せて綺麗な箱を抱えて通り過ぎて行く。
「なるほどね…通りで浮き足立ってたのかシャチは…」
この島へ着く前やたらとそわそわしていたシャチを思い出しては苦笑いした。
「うーん…」
バレンタインデー。
女子が想いを寄せる相手へ愛の告白をチョコレートに託す日。
そして恋人同志が愛を語り合う日。
愛を生み愛を育む特別な夜。
「うわ〜真っ昼間からお盛んな事で」
路地で熱い抱擁を交わし愛を囁き合うカップルを見てエリナは肩をすくめた。
ま、私関係ないし?
両手に持った買い出し品も重く、そそくさと船へと足を進める。
が、その足は止まった。
「待てよ…私…ローに渡さなきゃダメ…?」
気付かなきゃ良かったと心底思う。