第2章 買い忘れは無き様に。
「くそ…」
シャワールームでその舌打ちは酷く響いた。
何度ポンプを押しても出てこないそれ。
手が疲れるだけでその音さえ空しさを煽る。
「ベポめ…忘れてやがったな」
ここまで来て人のせいにするのはロー。
先日島へ上陸した際にベポに買っとけと頼んでいたシャンプーとボディソープ。
もう無くなりそうで、おつかいを言いつけていたが彼はどうやら忘れていたらしい。
実際自分も頼んだ事をすっかり忘れていたのだが。
「畜生…」
眉間に皺を寄せ考え果てていると、今まで視界にさえ入らなかった棚の隅。
色鮮やかな瓶が並ぶそのエリアは一つ一つ物が増えている事をローは知らない。
エリナの愛用品たちだ。
「………しょうがねぇか」
聞き慣れない綴りばかりのラベルの中で辛うじてシャンプーとボディソープを見つける。
蓋を開けるとよく嗅ぐ香りがした。
…クンクン
深いサンダルウッドの香りがするそれにエリナの髪に触れた時の事を思い出す。
目をつむればエリナを感じるようで。
女々しいと滅入りつつ、そんな事を少し思いながら頭を洗った。