第3章 an aphrodisiac Valentine.
その後船に戻り出港の準備は整い私待ちだった船内へ背中を丸くしながら乗り込んだ。
「エリナ遅ぇよ〜」
「ごめんごめん!ちょっと買い出し長引いちゃって…」
ジト目のクルーを他所に買い出し品を整理した後、船は島を発った。
エリナは小脇にチョコレートを隠し、そそくさと自室へ閉じこもる。
「うーん…いつ渡せばいいのやら…」
その夜ひょんな事で手にしたチョコレートを見つめエリナは考えあぐねていた。
真っ赤な和紙で包まれ金色のリボンが丁寧に巻かれている。
ふと思い出す彼女の言葉。
『この特別なチョコレート、中には二つ入ってるから、大切な人と一つずつ分けて食べて下さいね』
大切な人、ね。
せっかく貰った物だし、ご好意に甘えて使わせてもらおうじゃないか。
意を決しローの部屋へと続く扉をノックした。
「ちょっと入るよ」
特に返事がないのはいつもの事。
開けると相変わらず本と睨めっこしているローが目に飛び込む。
「………」
入ったはいいが何て切り出したらいいのか浮かばない。
突っ立っているとようやくローは私を視界に入れこちらを傍観している。
「なんだ」
「いや…その…」
想像以上に小っ恥ずかしい事態に内心こんなはずではないと焦る。
ゴクリと息を飲んで背中に隠していたそれを机の上に置いた。