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〖 刀剣乱舞 〗 ~ 風に吹かれて~

第5章 降り止まない雨はない


加「遅いよ主!今までどこに行ってたの?!」

『ごめんなさい!ちょっと個人的に用があって、その』

加「こんな時に個人的な用事ってなに?」

歌「加州、今は主に早く支度をして貰わなければ。じゃないと長谷部の雷が落ちる事になる」

ね?と加州さんに目配せをして、歌仙さんは私の背中をそっと押しながら部屋へと促した。

それからはあっという間に加州さんと歌仙さんに身支度されられ、所謂ちょっと煌びやかな巫女装束のような姿に着付けられた。

『お、重い……』

結い上げられた髪に幾つもの飾りが付いた簪を差し込まれ、少々気合いを入れていないと頭が傾きそうになるのを堪える。

加「我慢してよ。本来なら普段からこういう髪結いしてて当たり前な感じなんだからさ。だいたい主ってばそういうのほったらかしで可愛くない格好でいるんだし」

加州さんのお小言に、そういえばこんのすけから簡単に説明されていたけど、なんだから堅苦しいのは動きにくいからと自由にされて欲しいと願い出たのは私だと思い出す。

だって演練のときのような格好なら生きていた時に着なれていたし違和感はなかったけど、こういう風に着飾れとなると日常生活には私には不向きだと思ったから。

だからいざとなったら、ちゃんとするっていう約束をさせられたんだけど、まさかこんなに早くその時が来るとは考えてなかったし。

まぁ、それは私が審神者なるものを引き受けた以上、いついかなる時にその事態が訪れるかなんて分からないことだから流れに身を任せる他ないのだけれど。

加「はい、出来上がりっと。歌仙、そっちはどう?」

歌「こちらも雅に仕上がったよ。うん、いいね・・・やはりこの簪を選んで正解だ」

結い上げた髪に差し込んだ簪に飾られた桜の花を指先でシャランと揺らした歌仙さんが目を細める。

加「じゃ、急ごう。じゃないとホントに長谷部の雷が落ちる、あ、主は裾踏んづけて転ばないように俺の手にしっかり捕まってね?」

歌「そうだね、転んだりしたらせっかくの姿が台無しだ。じゃあ、反対側の手はこちらにどうぞ?」

両方から差し出された手に自分の手を重ねれば、それはキュッと優しく握られる。

加「よし、それじゃみんなが待つ中庭へと行きますか」

加州さんの言葉を合図に、私たちはできる範囲で足早に部屋を後にした。
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