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〖 刀剣乱舞 〗 ~ 風に吹かれて~

第4章 懐かしい味と、優しい味


『用事というか・・・あの、さっきのことなんですけど、もしかして太郎太刀さんが気を悪くされたのではないかと思って、その・・・』

緊張のままに辿たどしく言えば、太郎太刀さんはさっきの?と言いながらも、あぁ、と小さく呟いて私の顔を見た。

太「それこそ主がお気になさる事ではありませんよ。次郎はいつも唐突に自分の意見を主張する事がありますから」

『でも、あの場所に太郎太刀さんを選んだ事とか、心良く思われなかったのではないかと気になってしまって』

そう言ってすぐ、太郎太刀さんの表情が曇るのを見てしまいハッとなる。

太「誰かに、いや、長谷部に聞いたのですね?」

『・・・すみません。でも、決して興味本位で聞いた訳ではありません』

本来ならば聞かれたくない話だったのだろうと謝ると、太郎太刀さんはいずれ私の耳にも入るだろうと思ってはいたからと瞼を伏せた。

太「別に隠していた訳でもありません。ただ、この本丸の審神者として着任したばかりの主にお聞かせする
べき話ではないと・・・いえ、違いますね。私自身がまだ、あのお方の事を忘れられないだけなのです。あのお方は確かにここにいて、時には笑い、時には胸を痛めて涙を流して、ここに存在していた。確かに、あの日までは・・・」

太郎太刀さんの言うあの日とは、きっとここでの最後の日の事を示しているのだと、その表情から感じ取る事が出来た。

私よりも何代も前にいた、大切に思っていた人。

その人を看取ったという太郎太刀さんは、今までもずっとその時の事を忘れられずに過ごして来たんだという事も。

太「ご存知の通り、私と次郎は奉納されていた大太刀。別の場所に奉納されていたとはいえ兄弟太刀でもあり、他の刀剣男士たちよりも私を気にかける事が多いのでしょう。例えるならば、粟田口の皆のように」

粟田口の皆と言うのは、一期一振さんたちの事だなとすぐに分かり、日頃から見掛ける皆さんの姿を思い浮かべては兄弟仲がいいのは羨ましい事だと返すと、太郎太刀さんは私にはそういった関わりの者はいなかったのか?と返される。

『私はひとりっ子だったので、兄や姉、それから弟や妹がいる人が羨ましかったです。私の父が祖父が構えていた道場を継ぐことをしなかったので、祖父はその道場の跡継ぎとして男の子が欲しかったようですがそれも叶わず、その為に私には随分と厳しかったです』
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