第4章 懐かしい味と、優しい味
『私には、皆さんがどのような編成で組むのが一番最良かという満足な編成は出来ませんでした。だからこそ、過去の色々な組み合わせや長谷部さんからのお話を聞いて、それで』
次「・・・それで?」
戸惑う私の気持ちを覗くかのように、次郎太刀さんの目はまっすぐに私を捕らえる。
大太刀をひと振り必要なら太郎太刀さんじゃなくてもと私も長谷部さんに同じ事を言った。
その長谷部さんも過去のデータやこの間の演練での結果などを踏まえて太郎太刀さんをと私に提案してくれた。
ただ最後の最後まで長谷部さんも、結論を迷ってのことだけれど。
長谷部さんの思案した最終候補には、次郎太刀さんの名前も残っていた。
それならいっそ太郎太刀さんではなく、次郎太刀さんに変更をしても良いのではないか?と自分自身に問い、ならばとそっと目を伏せた。
『変更を、伝えます』
長「・・・主?」
私が出そうとする決断を先読みして目を見張る長谷部さんに小さく首を振って見せ、その後、次郎太刀さんを見る。
『大太刀は、次郎太刀に』
たったそれだけを伝えれば、次郎太刀さんはフッと小さく笑ったようにも見え、それまで静かにやり取りを見守っていたみんなからはざわつきが聞こえて来る。
だけど、それをまた静かな時間に戻せるように私は続けた。
『これが最良であるかは、分かりません。ただひとつ討伐に行く皆さんにお伝えしたい事は、どうか・・・どうかご無事で』
視界の隅に、静かに立ち上がり広間を出て行く太郎太刀さんが映る。
次「やれやれ、アンタに言われちゃァ、頑張るしかないね」
長「次郎太刀、貴様!!」
肩を竦めて笑う次郎太刀さんに長谷部さんが叫ぶも、私は大丈夫だからとその長谷部さんの袖を掴んで止めた。
『私からの伝達は以上です。長谷部さん、後をよろしくお願いします・・・少しだけ、ひとりにして下さい』
長「では、部屋までお送り致します」
そんな長谷部さんの申し出もやんわりと断り、私は太郎太刀さんを追うように広間から出た。