第4章 懐かしい味と、優しい味
私が全てを発表してからも太郎太刀さんはどこか遠くを見るような顔のまま身動きひとつしない。
そんな太郎太刀さんから目を離す事も出来ずに、私自身もそれ以上は何も言えずにいた。
太郎太刀さんは、過去の出来事を知っていながらも自分を指名した事を、悲しむだろうか。
それとも、恨むだろうか。
長「・・・のんびりしている時間はない・・・宜しいですね、主」
『え・・・』
不意に長谷部さんから声を掛けられハッとするも、それが最後の確認だと言うことに気付き、本心ではこれで良かったのかと迷いつつも、その疑念を振り払うようにゆっくりと瞬きをする。
この任務が無事に終わったら、そしたら太郎太刀さんとはちゃんと向かい合って話をしよう。
審神者たるもの、なにも話したくない全てを聞き出して管理するような事は必要ない。
だけど、この部隊編成がただいたずらに組まれたものではなく、太郎太刀さんが必要だったからだということを自分の言葉で伝えたいから。
『は、』
次「ちょっと待ちなよ長谷部、それアタシじゃダメかい?」
漸く送り出す覚悟を決めて長谷部さんに返事をしようと口を開きかけた時、次郎太刀さんの言葉がそれを留めた。
長「時間はないと言っただろう次郎太刀。それに隊の編成に関しては主がお決めになった事だ。それとも、お前は主がお決めになった事が、」
言いながら長谷部さんが私を振り替えるも、次郎太刀さんは構わず話を続ける。
次「そうじゃないさ。ただ、大太刀が必要だってなら、兄貴じゃなくてアタシでもいいって事じゃないのかい?」
次郎太刀さんの言う通り、もし太郎太刀さんを選ばずにいても大太刀は他にもいるのは確かでもある。
長「これは主とよく考えての編成だ。これ以上も、これ以下もない。それでもまだ言い足りない事はあるのか?」
次「じゃあ聞くけど長谷部。この部隊編成に必要な大太刀が他の誰でもなく、兄貴じゃないとダメな理由ってのはあるのかい?」
決まった事は覆せないと言う長谷部さんに、次郎太刀さんはなおも食い下がっては長い髪を揺らした。
長「この任務には太郎太刀が必要だ。それが答えにはならないのか」
次「へぇ・・・兄貴が必要ね。それなら主、アンタはどうなのさ?長谷部の言うように、他の誰でもなく兄貴が必要だと思うからの選別だったのかい?」
『それは、その・・・』
