第4章 懐かしい味と、優しい味
行き先が・・・それにその場所は兄貴は・・・
柄にもなく焦燥しながらも兄貴を見れば、その顔はさっきとは違って些か血の気が引いているようにも見えた。
『・・・以上六名編成、隊長は へし切長谷部とします』
隊長が誰だなんて、アタシにはどうでもいい。
けど、なぜ複数人いる大太刀の中で兄貴を指名した?
刀剣男士としての今の能力差なら、兄貴もアタシもたいして変わりゃしない。
大太刀が必要ならば、他にもいるじゃないか。
確かに普段の石切丸は優し過ぎるくらいだけれど、それでも戦闘になればちゃんと強い。
蛍丸だって、いや、蛍丸はアタシより戦闘に長けている。
それ以前に、あの時の隊には全てを知っている長谷部もいたじゃないか。
なのになぜ今、その部隊編成に兄貴を入れたんだい!
長「主がいま読み上げた者、和泉守、堀川、薬研、今剣、太郎太刀。以上の者は即刻身支度を整えて転送装置の前に集まるように。こんのすけからも伝えられている通りあまり猶予のない出発だ、のんびりしている時間はない・・・それで宜しいですね、主」
隊長を命じられた長谷部がキッパリと言い切り、それに促されるように、いや、どことなくまだ心配そうな顔をしたままの主がゆっくりと数回瞬きをして頷きかけるのを見て思わず立ち上がり、長谷部と主を見据える。
「ちょっと待ちなよ長谷部、それアタシじゃダメかい?」
突然立ち上がって言うアタシを、周りにいた刀剣男士達は驚きながら見上げる。
長「時間はないと言っただろう次郎太刀。それに隊の編成に関しては主がお決めになった事だ。それとも、お前は主がお決めになった事が、」
まるで反旗を翻したヤツを見るような目で長谷部がアタシを睨むのを遮るように続けて言う。
「そうじゃないさ。ただ、大太刀が必要だってなら、兄貴じゃなくてアタシでもいいって事じゃないのかい?」