第2章 新しい生き方
拝命って、別に私が頼んだ訳じゃないけど···ま、いっか?
『ちなみに、そのお世話係って言うのはどんな?』
長「主の毎日の身支度、風呂の世話、食事の配膳、部屋の掃除、夜中の厠へのお供、それからお召し物の洗濯···は他の適任者がいますが、そう言った細かい事から、主の職務のお手伝いなどを言い付けて頂ければ」
ちょっと待って。
いま、説明のなかにさりげなく身支度とか風呂の世話とか入ってなかった?!
『それってつまり、着替えの手伝いとか、お風呂に一緒に入って、お背中流しましょう、とか···そういう事?!』
長「風呂···ですか?主がご希望とあらば、この長谷部はお供しますが···ですが、その···」
言葉尻をモゴモゴとさせながら顔を赤らめる長谷部さんを見てハッと我に返る。
しまった!
考えてた事が口から全部出てた!!
『お、お風呂はひとりで入れるので大丈夫です!トイレ···あ、えっと、厠も!とりあえず今は、この本丸とやらを案内して下さい』
早口に言って、今いる場所からざっと見渡す限り広々とした邸内で迷子にならないように案内して貰えるようにお願いをする。
長「畏まりました。では、」
『あ、ちょっと待って下さい。その、畏まった感じはどうも慣れないので、普通に話して下さい』
長「普通に、とは?」
『だから、もっと···こう、なんて言ったらいいのか···上司と部下みたいなんじゃなくて、もっと砕けててもいいですよ?』
長「主に対して、そういう訳には···」
そう言われるだろうと思っていたけど。
でも、なんだかそれだと肩が凝りそうだしなぁ。
『じゃあ、長谷部さんが話せる範囲で砕けて下さい。その方が私も話しやすいし···ダメ、ですか?』
長「主がそこまで言うのであれば···あるいは···いや、しかし···どうしたものか···」
そこまで悩むようなこと、私言ったかな?
彼のあまりに真剣に悩む姿を見て、現代のみを生きていた私にとって、主従関係の繋がりというのはここまで固いものなのかと眉を寄せた。
『今すぐにと言うのが難しいなら、後々皆さんと打ち解けてからでも構いません。とりあえず今は私も、ここへ連れて来られたばかりなので···長谷部さん、色々と教えて下さい。今は長谷部さんが1番、頼りになると思ってますから』