第2章 新しい生き方
そう伝えれば、今まで悩みに悩んで唸っていた長谷部さんが急にキラキラとした表情になって、胸を張った。
長「お任せ下さい!この長谷部、主のお世話係を死ぬ気で全う致します!」
いやいやいや。
私のお世話だとか、死ぬ気でやるほどの事でもないんだけどね。
長「では主。まずは皆が待っている広間へとご案内致します」
『あ、はい!宜しくお願いします』
さっそく上ってきたばかりの階段を降りようとすれば、グイッと手を引かれてピッタリと閉められていた襖の中へと連れて行かれる。
『あ、あの、長谷部さん?広間へ···行くんですよね?』
長「えぇ、そうですよ?皆にお披露目をするには支度が必要です。いま着ている物は軽装ですから、いま一度、正装に着替えて頂きます。もちろん、そのお手伝いはこの長谷部が」
はい?!?!
着ているものを全部脱いで着替え直す?!
その手伝いを長谷部さんが?!
ちょ、待っ···うそでしょ?!
部屋の灯りを付ける長谷部さんの向こう側に、恐らく私が着替えるであろう衣装が用意されている。
長「さ、主。こちらにお着替え下さい」
さも当たり前のように言うけど、着替えの手伝いって言うと、脱がせたり着せたり···だよね?!
ザッと見る限り、どうやっても今は私ひとりで着付けられるようなものでもない。
ここは諦めて···いやいや、長谷部さんは元は刀剣だとは言え、今の姿は見間違えることもなく男性であって。
とは言え、頑なに断り続けたところで自分でどうにかなることでもなくて。
長「主、どうかしましたか?」
さっきと変わらずキラキラとした顔で言われたら、もう···お願いするしかない、けど。
『えっと、長谷部さん?自分で出来る所まではなんとかしたいなぁ···なんて思うので、それまでは部屋の外で待っていて貰えませんか?』
長「ご自分で···ですか?」
『はい。多少の和装ならば、なんとかなるかなぁって』
子供の頃から、おじいちゃんには剣術を。
お母さんはそれを嫌がって、女の子らしく育って欲しいからとか言って私をお茶の稽古へと通わせた。
その身支度はお母さんがほとんどしてくれていたけど、見様見真似なら、多少は···
長「分かりました。それでは何かあればお声かけ下さい。それまでにもう一人、支度に必要な人材を連れて参りますから。では···」
