第4章 懐かしい味と、優しい味
❀❀❀ 次郎太刀 side❀❀❀
アタシにしては珍しく真面目に燭台切と内番の畑仕事をしていると慌ただしくこんのすけが現れた。
かと思えば、急な時間遡行軍の討伐へ向かう話があるから広間に集まるようにと伝え、また他のみんなの所へ行くと消えていった。
急な時間遡行軍の討伐って言ったって、いつだってそんなものは急な話じゃないかと燭台切に言えば、それもそうだねと燭台切は笑って、収穫したばかりの野菜を籠に入れた。
・・・のは、つい半刻ばかり前の事。
今はその広間で、たまたま空いていた兄貴の隣りに腰を下ろして上座でやり取りを始める長谷部と主をぼんやりと眺めてる。
まーったく長谷部と来たら、隙あらば近侍だと言っては主を独り占めしようとするんだから。
今だってほら、ちゃっかり手なんか握っちゃってまぁ?
ほんっと、長谷部は今の主がお気に入りなんだろうねぇ。
その主もオロオロしちゃって、あの演練の時の主とはまるで別人のようだよ。
あの時はさすがにアタシもド肝抜かれたさ。
まさかあんな可愛い顔して、男の勲章を蹴り上げてトドメ刺すだなんて・・・和泉守は腹抱えて笑ってたけど、他のみんなは複雑な顔してたってもんさ。
その時を思い出して笑ってしまいそうになるのと同時に、主が部隊編成の発表をすると宣言した。
アタシとしちゃ、誰が編成に選ばれようと構わないってのは本音。
だけど、その行き先がねぇ・・・
チラリと隣りにいる兄貴を盗み見ては、行き先を聞いても平静を装っているようにも見える兄貴が密かに眉を潜めているのが分かる。
主と長谷部で、いったいどんな編成を作り上げたかなんて知らないけど、あの場所はアタシら大太刀が一太刀くらいいてもおかしくはない。
『では、今回の討伐へと向かう隊の編成を発表します。打刀 へし切長谷部、同じく打刀 和泉守兼定、脇差 堀川国広、』
長谷部に和泉守、それから堀川を入れる当たりは長谷部の思案を取り入れた感じだね。
同じく持ち主の元に過ごした和泉守と堀川なら、いざとなったら阿吽の呼吸でってのも考えられる。
『短刀 薬研藤四郎、同じく短刀 今剣』
緊張した顔を見せながらも淡々と読み上げる主を微笑ましく見守っていると、最後に一瞬躊躇う様子を見せる姿にどうしたのかと、目を離せなくなる。
『大太刀 ・・・ 太郎太刀』
兄貴を、だって?!
