第4章 懐かしい味と、優しい味
『どんな、人だったんですか?』
思わずそんな言葉が、私の口から零れていた。
長「そうですね・・・とても聡明で、美しいお方でした。当時の太郎太刀とはとても仲が良く、小暇があればよく本丸内の庭をふたりで散歩したり、縁側で肩を並べて五虎退の虎を撫でては、笑いあって話を弾ませておりました。だがしかし、そんな日も長くは続かず審神者としての力が弱まり始め、それがきっかけとなり気の病で床に伏せている日が多くなり、やがて体調を崩しそのまま・・・この本丸で薬研付き添いのもと、太郎太刀に見守られながら息を引き取りました」
『そう、だったんですか・・・』
私は、審神者の最後がどうなるのかまだ知らない。
いま長谷部さんから聞いたように、ここで最期の日を過ごすのか。
それでも別の何かがあって、ここを去る日が来るのか。
それはきっと、その時その時の審神者によって違うんだろうけど、聞いた限りの内容だとその審神者は太郎太刀さんとお互いに想いを募らせる相手だったんじゃないかとも思わせる話で。
それを話す長谷部さんを見ると、もしかしたら長谷部さん自身も、その人のことが好きだったのではないかとも思えた。
叶わぬ想いを抱えながら、どれだけ長い月日を過ごしたんだろうと思うと、それがどれだけ苦しくて辛かったかだなんて私には計り知れなかった。
長「少々、昔話が過ぎましたね。こんのすけ、政府からの伝達を詳しく」
コホンと小さく咳払いをした長谷部さんがこんのすけに言って、出された指示の内容に目を伏せる。
長「なるほど。では、主と話し合って早急に人選をしよう。主、今いる刀剣男士の中より短刀二名、脇差し一名、打刀を二名、大太刀一名を構成しましょう。行先には建物はなく野戦で、大太刀を連れて行くのも範囲広く見れば必ずお役に立ちましょう」
まだまだ勉強する事が多い私には自分ひとりでの人選なんて難しいと思っていたから、長谷部さんのアドバイスを素直に受け入れる。
ただ、大太刀と聞くとどうしてもいま話を聞いてしまった為か太郎太刀さんの顔が浮かんでしまい表情を曇らせてしまう。
けれど、いまここにいる大太刀となれば太郎太刀さんや次郎太刀さん、それから石切丸さんと蛍丸さんの4人だから、その中から選ばなければならない事は変わりない。
となると、他の刀剣男士さんたちとのバランスも考慮しなければならない。
