第4章 懐かしい味と、優しい味
和「他に誰がいるってんだ?」
『そう言われるとそうなんですけど、でも私にそんな大事なお役目が出来るんでしょうか・・・』
長「でしたら尚の事、たくさん学んで頂かなくてはなりませんね」
厳しい指導はこの長谷部にお任せを、と怪しく微笑む姿に私は辛笑を浮かべるしか出来なかった。
燭「さ、話はそれくらいにして食事にしよう。せっかくの料理が冷めてしまうよ」
燭台切さんの言葉に長谷部さんもそうだなと言って、周りに集まって来ていた他の皆さんをそれぞれのお膳の前に促すのを見守りながら、さて私はどこに座ろうかと見渡しているとどこからか伸びてきた誰かの腕にグイッと引っ張られる。
『う、わっ?!って、次郎太刀さん?!』
次「いつまでそんなトコに突っ立ってるのさ?」
『えっと、皆さんそれぞれ仲良く座ってるし、私はどこに座ろうかなって考えてて』
普段から仲の良い者同士が集まり、輪になるように膳を前にしているのを見ながら言えば、次郎太刀さんがカラカラと笑う。
次「仲が良いだとか、そんなの気にしてたらいつまで経っても朝餉はお預け食らうってもんよ?ってなワケで、アンタはアタシと来なさい・・・よいしょ、と」
ニヤリと笑った次郎太刀さんがいとも簡単にヒョイっと私を担ぎ上げると同時に、フワリとした大きな浮遊感に戸惑う。
『次郎太刀さん?!』
次「ちょっと?暴れないで頂戴、落ちても知らないからね」
落ち・・・えぇっ?!
長「次郎太刀!!貴様・・・主に何をする!」
次「ほら、アンタが騒ぐからもう見つかっちゃったじゃないさ。長谷部、こういうのは早いもん勝ちってね!モタモタしてるアンタが悪いんだよ。主はアタシ達と朝餉を食べるからアンタは大人しく粟田口のおチビ達と食べてなさい」
様子に気付いた長谷部さんが眉間にシワを刻み、大股で歩み寄る姿に次郎太刀さんがべーっと舌を見せた。
長「次郎太刀!」
『あはは・・・なんかそういう事みたいです、長谷部さん』
長「主まで・・・」
担ぎ上げられたまま言えば、長谷部さんは大きくため息を吐いて自分のお膳の前へと戻る。
次「燭台切?いつものアレ、頼んだよ」
燭「そうだね。みんなお腹ペコペコだから」
次郎太刀さんが言うと燭台切さんがポンッとひとつ手を叩く合図を送り、みんなの頂きますと、それから楽しそうな会話が広間に広がって行った。
