第4章 懐かしい味と、優しい味
長「では、開けますよ?」
まるで私がここに来た時のように言って、長谷部さんが広間の扉をスルスルと開けて行くと、その向こう側では、今まさに食事をしようと集まった皆さんがいて。
『おはようございます。ご心配お掛けしてすみませんでし、たぁ?!』
まずは挨拶をと思えば、突如目の前に現れた白い塊に押し倒される。
長「主!!」
『い、ったたた・・・びっくりした・・・あれ?キミは五虎退さんの虎さん・・・』
長谷部さんに引き起こされながら私のお腹の上のモフモフした塊をよく見れば、それは白い虎さんで。
5匹いる五虎退さんの虎さんはみんな懐いてくれてるけど、その中でもなぜかこの子だけはもの凄く懐いてくれてるんだよね。
五「あるじさま、虎くんがごめんなさい・・・」
『大丈夫です、ちょっとびっくりはしたけど』
そう言っている間にも、虎さんはペロンペロンと私の顔を舐めてはつぶらな瞳を向ける。
『ありがとう、虎さん。キミも心配してくれたんだね』
私が言うと、虎さんは小さくガゥ・・・と鳴いてはふわふわの体を擦り寄せた。
・・・のは、いいんだけど。
気が付けば私を囲むように5匹の虎さんが集まっていて、遊ぼう?とせがむ子供のようによじ登り始める。
『ご飯食べたらたくさん遊んであげるから待っててね?』
よしよし、とそれぞれの頭を撫でていると、長谷部さんが小さくゴホンと咳払いをする。
長「主・・・先程も申し上げた通り、遊びは学びの時間と庶務が終わってからですからね」
『ちゃんと分かってます。楽しみが後にたくさんある方がいろいろと捗る事もありますから・・・頑張ります・・・』
長「今日は新たに主のお役目を試して頂きたいと思ってますから、そのつもりで」
新たな役目?
それってどんな事だろうと考えたことが伝わったのか、長谷部さんはまたひとつ咳払いをして私を見据えた。
長「こんのすけより聞かされています。政府がそろそろ刀剣男士の顕現をするようにと伝達されているようです。なので主のご様子を見ながら、この長谷部がお付き合いさせて頂きます」
『顕現・・・とは、なんですか?』
和「要するに、だ。主が儀式でオレたちと同じような刀剣男士を呼べばいいって話だよ」
和泉守さん達みたいな人を呼び出す儀式・・・
『あぁ、なるほど!って、えぇっ?!私がですか?!』
