第4章 懐かしい味と、優しい味
心配性な長谷部さんの言いつけでもう1日寝てるようにと言われた翌朝、おでこにそっと触れる誰かの手を感じると、そこには予想した通りの人がいて。
『おはようございます、長谷部さん』
長「おはようございます。気分はいかがですか?」
『長谷部さんの言いつけ通りぐっすり寝て、燭台切さんと歌仙さんの作ってくれた食事を食べて元気・・・だと思います』
長「そうですか、それは良かった。熱もないようですし、そうですね・・・今朝は広間で朝餉を取りますか?」
『いいんですか?!』
その言葉に思わず飛び起きて言えば、長谷部さんは障子の隙間から入る朝日を反射させた目を細めて小さく笑った。
長「飛び起きるほど元気となれば、朝餉のあと今日から座学も仕事も大丈夫、という事で宜しいですね?」
怪しげに微笑み出す長谷部さんを見て、しまった・・・と思うのは既に遅く。
長「短刀たちも和泉守も、主の回復を待ち侘びておりましたからね・・・まぁ、和泉守の用事というのも見当がついてますが」
『短刀さんたちがって事は、また一緒に遊ぼうって事ですよね?それは楽しみだなぁ・・・和泉守さんが私に用事というのは・・・なんか、ちょっと・・・嫌な予感がしますけど』
恐らく・・・というか、確実に。
和泉守さんの用事というのは、道場で手合わせに付き合え、という事なんだろう。
長「いずれにしても、それらに行き着くのは主がしっかりと座学を勤しみ、今日までに溜め込んでしまった政府からの伝達書類に目を通すなどを全て済ませてからになりますが」
『ですよねぇ・・・アハハ・・・頑張ります・・・』
ガックリと項垂れるようにして言えば、長谷部さんはクスクスと笑いながらも、私の着替えを用意してくれた。
長「では、広間へ行きましょう。みんなも主の元気な姿を早く見たいと日々言ってましたから」
『はい!早くみんなと遊びたいなぁ・・・』
長「それは、仕事の進行を見てから考えさせていただきます」
にこやかに笑いながらも手厳しい事を言う長谷部さんに苦笑を向けながら、今日の朝ご飯はなんだろなぁ~と心弾ませながら、長谷部さんに連れられて自分の部屋を後にした。