第4章 懐かしい味と、優しい味
『あ、ちょっと、その・・・自分で出来ま、』
燭「ん?遠慮しなくていいよ?ほら、あーんして?」
だ、誰か燭台切さんを止めて下さい・・・なんて思っても、ここには長谷部さんと歌仙さんしかいないけど!
その2人でさえ燭台切さんの事を微笑ましく見守っている。
いや、違うな。
歌仙さんはともかくとして、長谷部さんの場合は呆気に取られて固まっていると言った方が近い。
燭「恥ずかしがらなくてもいいよ?短刀の子たちも一期一振が来る前はこうやって食べさせてたりしたから」
・・・ん?
それってもしかして?
・・・・・・・・・・・・子供と同じ扱い?!
あ、いや・・・短刀さんたちは背格好が子供のようでも中身は大人というか、燭台切さんから見れば確かに私はそうなのかもだけど。
なんせここにいる刀剣男士なる方々は、言わば神様な訳で。
たった十数年しか生きていなかった私なんて赤ん坊同然と言えばそれまでだけど。
私から見たら、それなりのお年頃な見た目麗しい方々の集団生活の場ですよ?!
それなのに、あ~んして?だとか、そんなの私・・・
・・・おじいちゃんにもされた事ないのにっ!!
でも、匙を差し出す燭台切さんのにこやかな笑顔には、どう足掻いても・・・勝てない、気がする。
『じゃ、あ・・・お言葉に、甘えて・・・』
ポツリそう言って、控えめに口を開ければ。
燭「うん、こういう時は遠慮なく僕に甘えて?はい、あーん・・・」
そっと入れられるお粥の温かさと柔らかな味が、口の中に広がっていく。
『美味しい・・・』
燭「良かった。じゃ、もう一口どうぞ?・・・はい、あーんして?」
新たにお椀から掬いあげたお粥をふぅふぅと冷ましてくれる燭台切さんが、やや目尻を下げながら私の口元へと匙を出し、それを食べる。
子供の頃から何度か熱を出してはお粥を食べてはいたけど、たったお粥だけでこんなに美味しく感じてしまうのは、きっと燭台切さんや歌仙さん、それに長谷部さんか側にいてくれるからなのかも知れない。
子供の頃の私は、熱を出しても誰かが側にいてくれたっていう事があまりないから。
お父さんもお母さんも仕事をしていたし、おじいちゃんは道場の事があるから、早く治せとは顔を見に来ても食事の時は私はいつも1人で食べるのが殆どだったから。
こんな時、誰かが側にいるって・・・心も温かくなる。
