第4章 懐かしい味と、優しい味
燭「お粥と、こっちは歌仙くんが出汁から炊いたおじやに、甘い卵焼きとだし巻き卵、それから穂紫蘇の実を塩漬けにした物に、しんじょとか・・・あ、この梅干しは去年僕が漬けたものなんだ。それから・・・」
燭台切さんがお膳の中身をひとつずつ指さしては説明してくれて、そのどれもが美味しそうな香りを立てていた。
お腹は空いてるけど、こんなにたくさん食べられるかな??
お碗や小皿に少しずつとはいえ、品数が多いから量的には結構な物に見える。
長「病み上がりだと言うのにこんなに並べられても、主が困るだろう・・・」
燭「ごめんね長谷部くん。でも、僕も歌仙くんも早く主に元気になって貰いたくて、なんか張り切っちゃったんだよ」
歌「僕は一応、止めたんだけどね。でも、作り始めたらいつの間にかいろいろ作っていたよ」
燭「調理したのは僕たちだけど、野菜を洗ったり下拵えは短刀の子たちが手伝ってくれたんだ。みんな君に早く元気になって遊んで欲しいんだよ」
『あ・・・』
そうだ・・・ケガが治ったら、また鬼ごっこしようって乱さんたちと約束してたんだ。
『約束を守るためにも、早く元気になってたくさん遊ばなきゃですね』
長「遊ぶ前に、座学にも集中して頂きたいですね」
あぅ・・・そうだった。
長谷部さんとの約束で、座学を終わらせからじゃないと庭遊びに参加させて貰えないんだった。
長「どちらにせよ、主が短刀たちと庭を走り回れるくらい元気になって頂く事が最優先ですが」
『あ~っ、えっとお腹空いたなぁ・・・アハハ』
長谷部さんのお小言が始まりそうな予感に慌てて話をすり替えれば、それを見ていた燭台切さんが目を細めた。
燭「冷めない内にどうぞ?あ、お粥はまだ熱いかも知れないから・・・」
ちょっと待ってね?と言った燭台切さんが匙でお粥を掬い、ふぅふぅと冷まして私の口元へと差し出した。
燭「はい、あーんして?」
『・・・えっ?!』
燭「ほらほら、遠慮しなくていいから」
そうは言ってもこれはちょっと・・・
恥ずかしいよ!!!