第4章 懐かしい味と、優しい味
燭「・・・あれ?主は眠ってしまっているのか」
歌「どうやらそうみたいだね。僕としては温かいうちに雅な風味を楽しんで貰いたいところではあるけど、出直した方がいいかな」
どれくらい眠ってしまっていたのだろう。
人の気配と、それから空腹を擽る香りに目を覚ます。
『あ・・・燭台切さんに、歌仙さん・・・』
まだボヤけた視線の先には、にっかりさんと石切丸さんがお願いしてくると言っていた2人がお膳を持って立っていた。
燭「ごめんね、起こしちゃたかな」
『いえ、大丈夫です。たくさん眠ってましたし、それに、こんなにいい香りが漂っていたら寝てる場合じゃないので・・・っとと』
高い熱を出していたのと、ずっと横になっていたせいもあってか、起き上がろうとするとクラリと視界が揺れて思わず畳に手をつく。
長「主、俺に掴まって下さい。下がったとはいえ、まだ熱はあるんですから」
『ですね・・・すみません長谷部さん、少し手を貸して下さい』
力の入らない体を長谷部さんに支えて貰って起き上がれば、その長谷部さんが支えてくれている場所に気付く事があった。
『長谷部さん、そこはこの前の演練での傷が・・・』
長「っ・・・申し訳ありません。痛かったですか?!」
『あ、そうではなくて。今は痛くないんです』
寝間着の袖をスルスルと捲ってみれば、確かにあった傷が消えていて自分でも驚いた。
燭「あれだけサクッと切れていたのに、もう治っているとか」
歌「それどころか、傷痕さえない」
『もしかしてあの時飲んだ薬・・・いえ、もしかしなくても、あの薬研さんがくれた薬に即効性があるのかも。ただ・・・副作用の方は、随分とまだ改良が必要みたいですけど』
高熱位の副作用で傷が跡形もなく治るなら、それはそれでいいのかも?と言えば、長谷部さんは若干眉を寄せながら副作用はないに越したことはありませんよ、と息を吐いた。
燭「今なら少し食べられそうかな?僕と歌仙くんで幾つか作ってみたんだけど」
燭台切さんか手元のお膳に目を落として、歌仙さんと顔を合わせて、ね?と微笑み合う。