第3章 最初のお仕事
自分も長谷部さんたちを見据えたまま一期一振さんに聞けば、私がケガをした腕に気を取られた時にあの審神者が駆け出して刀を振り上げ、長谷部さんが飛び出して行った・・・と説明をされた。
って言うかあの人、まだそれだけ動けたんだ?
それにしても、懲りない人だ・・・あれだけクギを刺したのに。
やれやれと言わんばかりにため息を吐いて、一期一振さんの手を借りながらも立ち上がり、長谷部さんと並び立つ。
長「主、俺の後ろにいて下さい」
『大丈夫です。それよりも長谷部さんの方こそ、刀をしまって下がっていて下さい。間違って当たっちゃったら大変な事になりますから』
長「しかし・・・」
穏やかに言っても、長谷部さんは頑として私の側を離れようとしてくれない。
まぁ、そりゃそうだよね?
仕えている主が危険な目に合っているとなれば、それを守ろうとしてくれるのは至極当然とも言えるんだから。
なら、仕方ないかなぁ。
あんまりこういう言い方したくはないんだけど、それで済むならって感じで。
『下がりなさい長谷部、これは命令です』
長「え、あ、主・・・?」
『私は下がれと言っているんです。聞こえなかったんですか?』
普段とは全く違う口調、それも上から目線ガンガンで口を開けば、長谷部さんは何度も瞬きをしながら私を見た。
呆気に取られて動き出そうとしない長谷部さんをなんとかして貰おうと一期一振さんに目配せをすると、一期一振さんが長谷部さんの肩を叩いて小声で何かを話し、それに頷いた長谷部さんと共に数歩下がった。
その距離感からして、恐らく自分たちの持ち物で賄える間合い、といった感じだろうけど。
『さてと。ついさっき私と約束事を交わしたのを、もう忘れてしまったんですか?それとも、理解が追いつかないほどの愚弄者ですか?』
「貴様!侮辱しおって!!」
こう言った人は、少し煽ればすぐ頭に血が上って自分の置かれている立場を忘れてしまいがちになる。
だからある意味、ひれ伏させるのは簡単。
いたもんなぁ、学校にも。
見た目ばっかり怖そうに着飾って肩で風を切るように歩く、悪い子さん。
ちょっと剣術の大会で勝ち上がったことを知ると、やたらと私に絡んで来ては後悔してお帰り頂いた。
たかが、女。
そんな言葉を吐きながら拳を振りかざして来る人達だったけど、そんなのもう慣れてたし。
