第3章 最初のお仕事
『そう言えば、好きな刀を選べと言ってましたよね?じゃあ、ここから先はこちらを使わせて頂きましょう。あなたのは代わりにこれをどうぞ?』
そう言って私が使っていた物を無理やり手に握らせ、相手がしっかり握り締めている物を取り上げる。
切っ先を確認するように自分の袖口にヒュウっと走らせれば、その袖口はハラリと切れた。
『刃を潰していると言っても、いい切れ味ですねぇ?』
怯みもせずに袖口を切った私を怯えるような目でジッと見てくる相手に、ここぞとばかりに薄笑いを浮かべて躙り寄る。
これまで多くの新米審神者さんから卑怯な手で刀剣男士を奪い、中には怪我を負わせて来たこの人を同じような手で懲らしめるのは正直言って気が乗らないけど。
でもまぁ、いい薬を飲ませると思えば・・・
それに早く帰らないとにっかりさんだって重傷だし。
・・・そう言えば、にっかりさんに重傷を負ったのはこの人の部隊との勝負の時だったんじゃ?
横目でチラリと自分たちの居場所を見れば、にっかりさんは薬研さんの横に座らせられ、遠目で見ても辛そうな顔をしている。
口端を少し上げながら何かを話してはいるけど、多分あれ、痩せ我慢だ。
だって私がちょっと腕を斬られてもこんなに痛いんだもん。
だから、にっかりさんが痛くないはずがない。
それなら尚更、早く帰れるようにしないと。
『さて・・・つまらない戯れは早く終わりにしようと言ってたので、そろそろ本気で行きましょうか!っと』
私には少し大き過ぎる刀を大振りに振り上げれば、その勢いのままに切っ先が相手に向かって振り下りる。
「ま、待て!落ち着きなさい!」
フラフラとしながら後退る相手を容赦なく追い詰め、大きく一歩を踏み出すと相手は焦ったのか足をもつれさせてその場にドスンと重たそうなお尻をついた。
『さぁ!お覚悟を!!』
「ひっ、ひぃぃぃぃっ!」
ザリッ・・・と鈍い音をさせ、振り下ろした刀を尻もちをついた相手の足の間へと思い切り突き刺す。
『フッ・・・な~んてね、驚きました?私がホントに人斬りをするわけないでしょ、オ・ジ・サ・ン?』
顔を蒼白させて今にも白目を向きそうな相手にそう言って、地面に突き刺した刀を抜く。
『あなたに斬られた腕が痛むので、このまま降参して頂けるとありがたいんですけど?それとも・・・まだ続けたいですか?』
