第3章 最初のお仕事
最初と違って私からも反撃を加えるようになると、相手の審神者は眉を寄せ始める。
まぁ、それもそうかな?
この人の太刀筋は毎度ほぼ同じような物だし、タイミングを合わせて弾き返しては一歩を踏み込んだ返しだけをして元の立ち位置に戻しているだけだから。
要するに、軽い嫌がらせのような事ばかりして煽ってるみたいな物だし。
相手が苛立てばそうなるほど、刀の振りは大振りになって隙もその分多くなる。
それが狙い目。
・・・と、思ったけど?
急に相手が動きを止めて、ダラダラと流れる汗をグイッと拭いながら怒りを含んだ目を私に向けた。
「フン、守ってばかりでは退屈過ぎる。これまでのでお主も準備運動くらいにはなっただろう。そろそろ遊びも終わりにしてやる」
・・・は?
・・・準備運動?
いやいやいや、どう見ても息が上がりだしてるのは貴方の方でしょ?
ハァハァと肩で息をしながらも自分がまだ優位にいると私に見せる姿に、思わずクスリと笑ってしまう。
「何が可笑しい。あぁ、そうか・・・自分の無力さに自嘲でも浮かんだか?」
アホかコイツ・・・っと、思わずポカンと気が緩んでしまいそうになるのを堪える。
自分の無力さに自嘲?
誰に言ってるの?
心の中で遠慮なく悪態をつけば、それはそれでまた笑いが込み上げてしまう。
遊びの時間は終わり?
あぁ・・・なるほど。
じゃあちょっと、アレやってみるかな?
それはまだ生前、おじいちゃんが不在の時に代わりに指導に入ったお父さんとの、練習後の・・・言わばチャンバラごっこでやり合ったある遊び。
お父さんはごく普通の会社員ではあったけど、私と同じように子供の頃からおじいちゃんに手厳しく剣術を教わっていたから、鬼の居ぬ間になんとやら的な感じで、よく私とそういう遊びをしては楽しんでいた。
どうして道場を継がずに会社勤めしてるのかと聞けば、自分にはあの人のように厳しくなり切れないから向いてないんだと笑って、それに、道場を継いだら自分の趣味の時間がなくなってしまうからね・・・とまた笑った。
その、お父さんの楽しみは。
泣く子も黙る、鬼副長ごっこ。
そもそもおじいちゃんの道場の流派がそれの枝分かれだったし、ごっこ遊びにしなくても?とは思ったけど、お父さんとの唯一の遊びが上に周り、私も同じようにマネては楽しんでいた。
